かまぼこ博士のかまぼこ百科
「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこと博士」呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまうでしょう。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのがご了承ください。
舞鶴かまぼこの原料魚(その3)
トビウオはダツ目トビウオ科の魚で世界の暖海域に約60種類ものトビウオが生息しているそうである。 舞鶴では、「丸とび」、「角とび」と上から見た頭の形の違いで2種類に分けている程度ではないだろうか?
出雲の野焼きちくわや山陰のアゴちくわの原料として有名である。だが、現在では、アゴ(=トビウオ)を主たる原料として製品作りをしているメーカーは少なくなってきていると聞いている。
漁期は夏の3ヶ月間ということで短い。 舞鶴でも20年ほど前には大量に水揚げされ、すりみにして毎年夏場には、かまぼこに使っていたことがある。
また、私がこの業界に足を踏み入れた頃、夏になると、毎年トビウオがかならず一ヶ月程度は続いて獲れたので、舞鶴でも夏の風物詩としてトビウオを原料とした“厚焼きかまぼこ”を作っていた。
トビウオは、肉質は白いのだが肉の中に血管が多数分布している(空を飛ぶ為、血管が発達しているのかもしれない)ので、かまぼこにするとやや色がくすんで灰色っぽくなる。
それゆえ、高級品については、あまりたくさんは使うことができず、グチの二、三割程度を置き換えて使う程度であったことを覚えている。
最近、地元では昔のように夏に大量にトビウオが獲れることもなく、すりみに多用することはなくなっているが、また、海の資源状況が良くなれば、使うこともあるだろう。
この魚は冷凍耐性が強いので、凍結貯蔵をしておいて1年を通じて使うこともできる。
ただ、舞鶴では生の鮮魚にこだわってきた関係で、冷凍魚をつかってすりみにすることはこれまでやってこなかったので、トビウオが多く獲れてもかまぼこ用に冷凍にして保管するということは現在もしていない。
<<たちうお>>
タチウオはスズキ目サバ亜目タチウオ科に属する。鋭い歯をもち、長く扁平な体となによりも銀色に輝くその色で非常にポピュラーな魚である。
大型のものは塩焼きなどにすると美味しいので鮮魚扱いで出荷されてしまうため、われわれ練り業者は少し小さいのを買ってすりみにして使う。
この魚も表面の銀粉が身の中に混入して、かまぼこの色が灰褐色になりやすいので、白さを大切にする高級かまぼこには使えない。
舞鶴では、味は非常によい魚なので、色の白さをそれほど要求されない天ぷら、ちくわ等に使っている。
タチウオを使った有名な商品といえば、紀州の産品で有名となった“ほねく”といわれる天ぷらである。 これはタチウオをすりみにせず、頭と内臓以外を丸掛けした(まるごとすり潰した)天ぷらである。
まさに、色とか食感は犠牲にしても、タチウオの旨みだけを活用した商品といえる。
舞鶴では、同様に魚を丸掛けした商品が生産されているが、その代表選手がいわしちくわ(丸海謹製)やジャコだらけ天(嶋岩謹製)などである。