うおづるくん 舞鶴のさかな 一般社団法人舞鶴市水産協会

舞鶴のさかなのガイドページです。
さかなの街舞鶴の魅力をご紹介します。

カテゴリー: コラム

投稿日/2021年3月11日

アジ

【日本海のさかなの話  最新の魚類学研究から】その③

アジ

いよいよ新しい年を迎える時期となりました。時間がたつのは早いもので、あっという間に一年が過ぎていきますね・・・。さて、一年を通じて舞鶴で水揚げされている魚として、マアジやマルアジ(青あじ)が挙げられます。また、冬は同じアジの仲間であるブリが旬を迎える時期でもあります。今回は、アジの仲間を中心とした話題を取り上げたいと思います。
アジの仲間(分類学上の単位で言うアジ科)は世界中に140種ほど知られています。日本には約60種、日本海の記録を見てみますと、今までに30種ほどが報告されています。アジ科の魚は、世界中の温帯〜熱帯に広く分布しています。日本海は寒いイメージもありますが、意外に多くのアジの種類が見ることが出来ます。
マアジやマルアジには、いわゆる「ぜんご」あるいは「ぜいご」と呼ばれるトゲのある鱗が体の後半に一列に並んでいます。専門的には、これを「稜鱗(りょうりん)」と言います。これがアジの仲間の特徴と思われがちですが、同じアジ科に含まれるブリやヒラマサなどこの稜鱗を持たない種も含まれます。アジの仲間は、体型もいろいろなものがおり、ムロアジのようにほぼ円筒形の体をしたものから(図1)、カイワリ(図2)やイトヒキアジのように体が高く、平べったい形をしたものまで様々です。生態を見てみると、海の表層を高速で泳ぐものから、磯や珊瑚礁周りに生息するものまで多様性に富みます。アジ類の様々な体型は、生態の多様性を反映しているのでしょう。

図1

図2

 秋から冬にかけては、南方系のアジの仲間が舞鶴の市場でもよくみかけられます。今シーズンよく見かけたのは、ナンヨウカイワリと呼ばれる種(図3)で、体が高くいわゆる「ひらあじ」と呼ばれる形をしています。体の側面に黄色い斑点がいくつかありますので、すぐにこの種を見分けることができます。その名前が示すとおり、もともとは琉球列島や黒潮流域に多く見られる種ですが、なぜか今シーズンは舞鶴でも多く見かけました。

図3

 さて、私たちに身近なマアジやヒラマサには、面白い分布の話があります。マアジは日本近海の温帯域に分布していますが、マアジそっくりのニュージランドマアジという種が赤道を挟んだ南半球の温帯域に分布しています。この二首、同種と考える研究者もいるくらい見た目がそっくりですが、分布は赤道で南北に分かれています。同じ現象がヒラマサにも知られています。ヒラマサもやはり日本近海の温帯域に分布していますが、赤道を挟んで南半球にはキングフィッシュと呼ばれる種が分布しており、この二種は互いによく似ているために、同種と考える研究者も多くいます。このように、きわめてよく似た種が赤道を挟んで分布するということを「反赤道分布(はんせきどうぶんぷ)」と呼びます。このような分布パターンは、共通の歴史を反映しているのではないかと考えられています。つまり、かつて氷河期などの地球が寒冷化した時期に、温帯性の魚(マアジやヒラマサ)は赤道を越えることができたのですが、今では赤道付近は熱帯域となってしまったために赤道を越えることができず、北半球と南半球に分かれて分布するようになってしまったのです。地球の歴史をからめて考えると、こういった分布パターンは興味深いものがあります。
ところで、話題は少し変わりますが、ヒラメやカレイ類は、眼が体の片方側に並んでいるというかなり特殊な形態をしています。ヒラメ・カレイ類は、どういった仲間から進化してきたのか、また、ヒラメ・カレイ類に一番近縁な仲間は何なのか、長い間注目されて研究されてきました。ところが、あまりにその形態が特殊化しているため、どのグループに近縁なのかということさえ全く分かっていませんでした。
この状況に、近年、遺伝子からのメスが入れられました。東京大学を中心とするグループが、いろいろな種類の魚の遺伝子を網羅的に調べ、魚類がどのように進化してきたかについての研究を進めてきました。もちろんその中にはヒラメ・カレイ類も含まれており、その結果は全世界の魚類研究者の注目の的となりました。ヒラメ・カレイ類に一番近縁だったのは、驚くべき事にアジの仲間だったのです。見た目にはアジ類とヒラメ・カレイ類は全く異なるために、この遺伝子からの説には懐疑的な意見も多かったようです。しかし、私のお隣の研究室にいる益田准教授は、この説はもっともだと思ったそうです。というのも、アジの仲間は、何かに「寄り添う」という面白い性質を持ちます。例えば、マアジでいうと、幼魚期に流れ藻やクラゲなどに寄り添って泳ぎます。ブリの幼魚「もじゃこ」も流れ藻に付く習性があり、ブリ養殖のための「もじゃこ漁」は、この習性を利用したものです。カイワリ(図2)についても、大きな魚に寄り添うようにして泳ぐことが知られています。もしかすると、このように何かに「寄り添う」というアジ類の特徴が、いつしか海底に「寄り添う」ようになって、ヒラメ・カレイ類のような魚が進化したとも考えられるのかもしれません。泳ぎの達者なアジの仲間と、あまり泳ぎ回らないヒラメ・カレイ類が近縁というのは、おもしろいところです。
遺伝子を調べる技術はここ20年ほどで急速に発展し、今では当実験所でもその分析技術を取り入れた研究をしています。今まではっきり分からなかったことが遺伝子を用いることで明らかにできたことが多々あり、私たちもそのパワーに期待して研究を進めています。またの機会にその成果をここで紹介していきたいと考えています。
【H23.1.1付け掲載】

投稿日/2021年3月1日

かまぼこは贅沢なたべもの  かまぼこ百科⑧

かまぼこ博士のかまぼこ百科


「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこと博士」呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまうでしょう。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのがご了承ください。

かまぼこは贅沢なたべもの 

日本の水産加工品の多くは、保存性を追及したものが多い。塩水に漬けてから干した魚の干物であるとか、高濃度の塩や砂糖に漬け込んで保存性を増したものであるとか、内臓や味噌やこうじにつけて発酵による香りと保存性を期待したものであるとかが殆どである。
しかしながら、「かまぼこ」だけは、他の加工品のような保存性を大きく期待したものではなく、お魚の身だけを食べたいという超グルメ発想から生み出された唯一の水産加工品であったということである。このことは、京都大学の名誉教授であった故清水先生にお聞きして、メモしていることであるから事実に間違いがないだろうと思われる。実際には、戦後、ビルマ(現在のミャンマー)やベトナム奥地で日本の揚げかまぼこ(舞鶴では天ぷらと呼ぶ)に似たような食べ物を食べている民族がいることが知られ、かまぼこのルーツは東南アジアではないかと推測されている。
それは事実であったとしても、それを現在のように魚肉だけを取り出して、その身を水で洗って色を白くし、魚の臭みや雑味を取り除き、油脂分を取り除いて独特の歯ごたえを出して、しかも、板につけて蒸しあげるというような食品にまで完成させた民族は世界広しといえども日本人しかないのである。
日本人が生んだ世界でも誇れる伝統食品であるかまぼこは、当時から日本人がいかにすぐれた食品加工の技術力を持っていたかを示している。
江戸時代に、ペリー提督が黒船にのって日本にやってきて、徳川幕府に開国を迫る中、当時の市民の暮らしぶりや、文化程度を調べて本国に報告しているものの中に「日本は、鎖国により多くのことは西洋に比べて、技術的に遅れているが、生活の中に根ざしている技術水準は非常に高く、応用力に富んでいる。なによりも新しいことを学んで吸収しようという意欲は非常に強い。将来わが国がこの民族を通商で敵にまわせば、脅威となる国の一つになるだろう」というような内容のことが記されているという。
かまぼこが贅沢品であるというのは、その原料の処理工程を見てもわかる。板についたかまぼこにする魚は、まず、頭と内臓をとり、骨と皮を取り去った身だけをたっぷりとした量の冷たい真水の中で洗うのである。その際に、血合いであるとか、汚れであるとかを洗い落とし、次に水槽を移して、魚の不要な油脂分を浮かせて取り去る。(油脂分のはいったすりみからは弾力のあるかまぼこができない)。最後に水分を搾り取る。
元々100あった魚から、こうしてできあがってくる魚の晒し肉は20くらいになる。つまり元の魚からは5分の1しかとれない晒し肉を原料としてかまぼこが作られているということであるから、いかに贅沢かがわかっていただけると思う。
かまぼこは、塩溶性たんぱく(塩によく溶けるタンパク質)を主に取り出して、これに2%前後の塩を加えて溶かし出し、分子量の比較的小さなミオシンというたん白を網目状に分散させて、さらにこれに熱を加えることで網目が固定されることで、バネのような構造になる。
これがかまぼこのアシ(弾力)といっている独特の食感を生んでいるわけである。
アシは使う原料の魚種によっても、魚のとれる海域、季節によって変動する。このため、地元の鮮魚を使い続けている舞鶴の職人たちの経験と勘と、協同組合の技術支援により、品質が大きく変動しないようコントロールされている。

 

投稿日/2021年3月1日

自家製調味エキスの開発  かまぼこ百科⑦

かまぼこ博士のかまぼこ百科


「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこと博士」呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次、21回に分けて掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまいます。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのでご了承ください。

自家製調味エキスの開発 

舞鶴のかまぼこは近海の鮮魚を使ってかまぼこ作りをしているから、少しコストが高くても安心してお買い求めいただけるとありがたいと記したが、生鮮魚を使うということながら、せっかく原料に高価な魚を買っておきながら、魚肉を採ったあとの頭も内臓も骨皮も全部捨ててしまうということでは実にもったいない。
そこで、平成初期の数年間、大学の先生や、各界の技術者とチームを組んで研究を重ね、かまぼこの原料魚の残さいである頭と骨、皮については、煮出して、それに酵素処理を行い調味エキスとし、濃縮、調整し、これを舞鶴かまぼこの味付けに再利用する技術を確立した。
現在も、舞鶴では、一般の(化学)調味料だけに頼らず、自らの使用している魚の残債物から抽出したエキス(MK-C)を再び、かまぼこの味(香)付けに使っている。商品名のMK-Cは(Maizuru Kamaboko Co-op)の頭文字をとって命名した。尚、この研究成果について、私は、平成5年に京都府知事より創意工夫発明功労者表彰を受けた。
実はこの実験も、最初は失敗の連続で、大変苦労した思い出がある。
かまぼこ屋さんで昔、魚肉を洗うために使っていたステンのズンドウを集めてきて、ガス屋さんに大型のガスコンロをお借りして、その中に魚のアラ(内臓以外の残さい)を入れて煮込んでいくのだが、量が多いので、なかなか温度があがらず、絶えずかきまぜないと、底のほうで魚のアラが焦げ付いてしまう。
また、沸騰させてから、今度は、急速に出し汁を冷まさないといけないので、ビニールに大量の氷を入れた氷枕のようなものを大量に作ってズンドウに投入してかきまぜながら冷やすのだが、なかなか温度が下がらない。試験を真夏にしたせいで、温度制御のために、たくさんのズンドウ鍋の前で徹夜の実験作業を何回か繰り返した。こうした実験で、私は二日ほど家に帰ることができず、実験場となった当時のすりみ工場(第二工場)に泊まったことさえあった。
前の日に煮出ししているときに部屋中に良い匂いがして、工場の従業員さんたちが、私が何をしているのか興味津々で集まってきてくれたたりしたのだが、朝になると、出勤してきた従業員さんが全員、私におはようと言ったっきり、変な顔をして部屋を出て行くのである。理由は簡単なことで、温度コントロールが不完全だったため、徹夜したのにもかかわらず、朝になると、実験したズンドウ鍋のほとんどが、メタン発酵をおこして悪臭を放っていたのであった。
一晩中、鍋の横で奮闘していた私の身体や衣類には、この悪臭が染み付き、あまりの悪臭に翌朝、家に入れてもらえなかったという大失敗の経験をした思い出がある。
その後、何度も失敗を繰り返す中、いろんな人や会社に助けられて、なんとか調味エキスの生産を実現させることができ、この自家製調味エキス(MK-C)を舞鶴のすべてのかまぼこ屋さんに現在も使っていただいている。
しかし、悲しいことに、私どもが鮮魚残さいからエキスを抽出する工程を当初から外注していた石巻の工場が今年起きた東日本大震災で水没してしまい、その1月後に経営者が心労で急死したことで再起不能となり、生産のめどが立たなくなっている。

 

投稿日/2021年3月1日

かまぼこは添加物多いというウソ(2)     かまぼこ百科⑥

かまぼこ博士のかまぼこ百科


「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこと博士」呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次、21回に分けて掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまいます。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのでご了承ください。

かまぼこは添加物多いというウソ(2) 

着色料についても、かなりの人が、健康への影響ありと考えておられるようだが、紅白の色合いは、日本人のハレの場を表現する唯一の歴史的、文化的な色合いである。
しかも、かまぼこを一生の間食べ続けても、摂取できる着色料の量はとても健康への影響があるような量ではない。 逆にどうしてもそれが嫌な方は、色のついていない白板か、表面を焼いた焼板をお求めになっていただければ、問題は解決する。
また、厚生省で認可された着色料についてさえも、合成品イコール毒というような極端な考えをする方が多くいらっしゃるが、天然着色料についても、退色が早いだとか、色合いが悪いだとか、合成品の数倍から数十倍というような量を入れないと色調が保てないといったいろんな問題があるので、われわれ生産者からすると、天然物だから安全ということはまず考えないほうがいいと思う。
また、かまぼこは製造する際に、独特のアシ形成(弾力形成)を阻害する油脂分は取り除かれるので、油脂の酸化を防止するためによく使われている酸化防止剤なども添加する必要はない。 また、一時、海洋汚染で騒がれたPCBのようなものは、ほぼ魚の油脂分に溶け込んでいる場合が多いのであるが、製造段階で油脂分を除去しているかまぼこはそうした海洋汚染の影響を受けにくいということができる。
このように、かまぼこという加工食品は、消費者がイメージで抱いているほど、添加物が使われているわけではない。
基本的に魚肉に添加されているものは、塩、砂糖、みりん、てんぷん、卵白、調味料………など、添加物というよりも食品に分類されるものがほとんどである。
また、塩については、かまぼこには3%以上の塩が入っていて、高血圧の人はあまり食べないようにとまことしやかにアドバイスしている栄養士さんなどがおられるようだが、これはあきらかに誤解が生んだ定説?といえる。
昔、かまぼこ屋さんが魚肉に塩をいれて、塩にとけるタンパク質を抽出する工程で、元の魚にたいして3%程度の塩を加えて練ったということが、一人歩きして、それが「塩分3%の定説?」になってしまったのかもしれない。
実際には、ほどよい食感にするためにさらに氷水や、砂糖、みりん、卵白、だし(調味料)などをいれて練っていくので、実際の製品の塩分値は2%前後となってる。
多くの加工食品の中でも、塩分値が2%程度の食品は、とても高塩食品とは言えない。まして、食パンのように一度にたくさん食べられるものでもないはずである。(食パンやうどんのような主食でも塩分が1~2.5%程度は含まれていることをご存知だろうか)
かまぼこが非常に消化の良い食品であるのに、消化が悪い食品だと思われていたり、まだまだ、誤ったイメージが定着しているようである。こうしたことを、一つ一つちゃんと説明をしてこなかった我が業界の責任は重いといわざるを得なない。

 

 

 

投稿日/2021年3月1日

かまぼこは添加物多いというウソ(1)     かまぼこ百科⑤

かまぼこ博士のかまぼこ百科


「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこと博士」呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次、21回に分けて掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまいます。
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かまぼこは添加物多いというウソ(1) 

かまぼこやちくわ、てんぷらなどの魚肉練製品(ぎょにくねりせいひん)には添加物や保存料が多いという消費者の不安感が強いようである。わたしはこの業界に足を踏み入れてからも、常に練製品には添加物が多く使われているのではないかとの消費者の不安の声を数多く聞かされてきた。
しかし、私には、魚肉練製品が他の加工食品と比較して添加物が多いという話は、全く、理解できないことであり、多くの加工品の中では、むしろ使っている添加物の種類が圧倒的に少ないほうの部類にはいると思っている。(私は大学を出てから、大手食品会社の研究所に入り、いろんな加工食品の研究開発業務に携わってきたのでよくわかる。)
中でも、舞鶴のかまぼこは、まず、近海の鮮魚を毎日、頭切り、内臓除去を実施して魚の肉(身)だけを取り、水でさらして適度な水分まで絞った生のすりみを原料として多く使用しているので、冷凍変性防止剤などの添加物は不必要である。 さらに、舞鶴かまぼこは、生の肉糊(にくのり)をかまぼこ板の上に成型して載せると、すぐにセロファン系のフィルムで表面を完全に覆って(焼き板は例外である)から蒸しあげているため、以後の工程で、落下細菌などの二次汚染を受けにくいことから、かなり日持ちがするようになっている。
そのため、昔のように保存料を入れなくても、舞鶴かまぼこは賞味期限10日間を保証している。(賞味期限というのは、おいしさを保証する期間の意味であって、日持ちする期間を示しているわけではない。) もちろん、こうした理由から10数年以上も前から舞鶴かまぼこには保存料はいっさい添加されていない。
組合の研究室で保存試験をしているが、条件さえよければ、実際には10℃以下の冷蔵庫で、2週間以上、生で放置しておいて、そのまま生で食べても大丈夫なときが多い。
販売店のほうから、さらに日持ちのする真空商品やレトルトなどへの要望も数多くあったが、舞鶴かまぼこは、やはり鮮度のよい日配品、生鮮品として消費していただくのが一番であり、おいしさにこだわれば、これ以上の日持ちは求めないという信念のもとに舞鶴かまぼこを生産してきている。
したがって、舞鶴では、一ヶ月以上も日持ちのするような長期保存用のかまぼこを製造するというような考え方を持っている事業者は今のところ皆無である。
今よりも日持ちを長く保証するためには、衛生管理のほかに、どうしても保存料に頼らざるを得なかったり、過度の加熱工程を経て、魚肉タンパクそのものを傷めて味を落さなくてはならなくなるからである。
ソーセージのように高温高圧殺菌をして、タンパク質を傷めても、強烈なスパイスなどを配合しておくことで味をマスキングしたりすることができるが、味覚的にも淡白なかまぼこではそうして誤魔化すことができないのである。

投稿日/2021年3月1日

トビウオ

【日本海のさかなの話  最新の魚類学研究から】その②

トビウオ

今年は夏が長かったものの、秋は少しで一気に寒くなったという印象でした。そういえば、春も短かったような気がします。ご存じの通り今年の夏は記録的な猛暑で、水温もずいぶん高い状態が続きました。さて夏の魚と言えば、真っ先に思い浮かぶ魚の一つにトビウオがあるのではないでしょうか?もう季節は冬になりつつありますが、今回は夏の暑さを思い出しながらトビウオについての話題をお伝えしたいと思います。
このあたりでトビウオと言えば、「角とび」と「丸とび」の二種類が代表的なものです。学術的に言うと、「角とび」の標準和名はツクシトビウオ、「丸とび」の標準和名はホソトビウオです。ちなみに、「標準和名」とは、日本全国どこへ行っても同じ「種」を指すように学術的に決められた「標準語」のような和名のことです。しかし、「丸とび」の標準和名が「ホソ」トビウオなのはどうしてなのでしょうね・・・。
世界中にトビウオの仲間は50種ほど知られています。日本ではこのうち30種が分布しています。表層を泳ぎ回る魚なので、どの種も分布域がとても広く、日本でも多くの種が見られるのです。トビウオの仲間は、どれも似た形態をしているので分類の難しいグループです。しかし、羽のような胸鰭を広げると種ごとに違った模様が見られ、比較的容易に見分けられる種もあります。
トビウオの仲間は、大変特徴的な形態をしています。胸鰭はまるで鳥の羽のように大きくなっており、また大部分の種では腹鰭も大きくなっています。胸鰭と腹鰭を広げると、大きな四枚の羽を持つことになります(図1下写真:アヤトビウオの背面写真)。

図1

トビウオの仲間はこの四枚の羽ではばたくのではなく、滑空するように飛びます。さらに、尾鰭を見てみると、上半分よりも下半分の方が大きいことが分かります(図2下写真:ツクシトビウオの尾鰭)。

図2

これは、トビウオが水面から空中へ飛び出すときに、尾鰭の下半分を使って水を「蹴る」のに都合がいいと考えられています。胸鰭ばかりに注目されがちですが、それぞれの鰭も「飛ぶ」ことに特化しているのです。また、体の中を見ると、腸が大変短く、食べたものを迅速に消化・吸収し、排泄物を体外に出します。これによって体を軽くして、やはり飛ぶことに適応していると言えます。
トビウオの体が特徴的なのは、それだけではありません。「側線(そくせん)」と呼ばれる器官の位置が変わっているのです。「側線」とは、魚の体の側面に走っている線のように見える感覚器官です。普通の魚では鰓蓋(さいがい・えらぶたのことです)の上端から緩やかに背中側にカーブを描きながら尾鰭の付け根まで線が走っているように側線があります(図3下写真:チカメキントキの側線)。

図3

この側線、実際は鱗に穴が開いていて、それが並んでいるために線のように見えます。この「側線」で魚は水の震動や動きを感じ取ることができ、例えば敵が近づいてくるのを感知できたりするのです。
さて、トビウオの側線を見てみますと、通常の魚とは違い、側線は鰓蓋上端から下に向かって走り、腹部を走って尾鰭の付け根まで到達しています(図3上写真:ツクシトビウオの側線の位置)。これもトビウオの生態を考えてみると簡単に納得できます。通常、トビウオは海面近くを泳いでいます。敵が襲ってくるとしたら、横ではなく、下からのことが多いはずです。トビウオの側線の位置は、このようなことに適応した結果なのでしょう。
トビウオ類と比較的近い類縁関係にあるのは、サヨリの仲間やダツの仲間、が挙げられます。サヨリもダツ(ダツ、ハマダツなど)も舞鶴の市場では見かけることができます。面白いことに、これらの仲間は、成長のいずれかの段階で、下顎が上顎よりも長く伸びる時期があります。実はトビウオも生まれてからしばらくの間は下顎が上顎よりも長い時期があり、成長に伴ってだんだん上顎と下顎が同じ長さになります。ちなみに、ダツの仲間は、両方の顎が伸びています(図4下写真:ダツの顎)。

図4

しかし、成長を追っていくと、まず下顎が伸び、サヨリのようになります。続いて上顎が伸びてきて、私たちが通常眼にするダツの顎になるのです。「個体発生は系統発生(=類縁関係)を表す」という言葉がありますが、まさにこのようなことを指しているのです。
面白いことにトビウオの仲間には「飛べない」トビウオがいるのです。日本海ではほとんど見られることはありませんが、サヨリトビウオと呼ばれる種で、太平洋側では普通に見られます。名前に「サヨリ」が含まれますが、歴としたトビウオの仲間です。しかし、胸鰭が短く飛ぶことはできません。このサヨリトビウオ、トビウオとサヨリの中間的な形質をいくつか持つため、トビウオがサヨリのような魚から進化した事を示しているのではないかとも考えられています。
さて、通常の年であれば、舞鶴の市場で見られるトビウオは「角とび」ことツクシトビウオと「丸とび」ことホソトビウオで、稀に胸鰭が真っ黒なカラストビウオや、小型で大きくならないホソアオトビが見られる程度です。しかし、今年は水温が高かったせいか、秋口まで変わったトビウオが捕れていました。小型で体がやや黄色みがかるツマリトビウオ、胸鰭に目立つ斑点があるアヤトビウオが捕れていたようです。特にツマリトビウオはこれまで日本海で採集された記録はありませんでした。これらのトビウオ、たまたま対馬暖流に乗って日本海に入ってきたのでしょうけど、今年の猛暑はトビウオの分布にも影響を及ぼしていたのかもしれません。
【2010年11月号に掲載】

投稿日/2021年2月18日

かまぼこがヘルシーな理由  かまぼこ百科④

かまぼこ博士のかまぼこ百科


「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこと博士」呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次、21回に分けて掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまいます。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのでご了承ください。

ダイエットの基本は栄養価が高く、それでいて低エネルギーのものを食べることである。そういった意味からもおすすめしたいのが「かまぼこ」である。
油で揚げた分エネルギーが高くなる揚げかまぼこ(舞鶴ではてんぷらという)にしても、カロリーは卵よりも低く、普通サイズの蒸しかまぼこだと、1本で約100キロカロリーしかなく。豚肉の半分以下の低さである。
ダイエット中はタンパク質が不足しがちであるが、かまぼこは高タンパク質であり、これをおぎなっていけるダイエットの強い味方なのである。
たんぱく質はアミノ酸が鎖状につながってできており、そのつながり方は食品によって違う。アミノ酸は約20種類あり、このうち体内で合成できない9種類を必須アミノ酸というのであるが、このアミノ酸をバランスよく含んでいるものが良質たんぱくといわれる。必須アミノ酸をどのくらい含むかを示したものがアミノ酸スコアで、これは理想的なたんぱく質を100点とした場合、食品がどれだけ理想値に近いかを示す数値である。
かまぼこ製品のたんぱく質の評価は必須アミノ酸をバランス良く含んでいるため、いわば、100点に近く、必須アミノ酸の一部が不足しているご飯や麺類、大豆などもかまぼこ製品と組み合わせることでおのおの不足分を補うことができるのである。
栄養成分としての意味はないが、最近、かまぼこの持つ独特の食感が脳によい影響をあたえるというような研究報告もでてきている。
中国では、この種の食感のことを「脆(ツオエイ)」といって表現し、中国人がもっとも好むところのものであるとのことである。
やわらかいものばかりを、ろくに咀嚼しないで食道に流し込むような食事が増えてきている現代人の脳はある意味、退化しているのだそうである。
かまぼこ製品には、一度かんだくらいではかみきれない強い弾力を持つものがあるため、消化が良くないと考える人がいるが、実はまったく逆なのである。
かまぼこ製品の弾力は、魚のたんぱく質だけで、その性質をうまく利用してつくられたものであり、魚肉をペースト状にするので、筋肉繊維がすりつぶされて消化されやすくなってるのである。
したがって、かまぼこは、育ちざかりの子供や、体力の弱った老人にとっても、とても吸収性のよい胃腸にやさしい食品ということになるのである。
かまぼこは日本人が平安時代以前から1000年もの間、食べ続けてきた誇るべき日本の伝統食品であり、似たような食品は、その発祥の地といわれている東南アジアの国々の一部に残っているが、鮮魚を加工して、現在のような食感と品質の“かまぼこ”にまで発展させた民族は世界広しといえでも日本人しかいないのである。

投稿日/2021年2月18日

かまぼこがヘルシーな理由 かまぼこ百科③

かまぼこ博士のかまぼこ百科


「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこと博士」呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次、21回に分けて掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまいます。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのでご了承ください。

 

テレビで何かの食品がヘルシーだとコメンテーターが言うと、スーパーマーケットの棚からその商品が人気殺到して消えてしまうというような現象が起こる時代である。
私は食品というものはすべてヘルシーだし、極論すれば、すべて毒だと考えている。特定のものを過剰に消費すれば、その食品は毒となり、いろんな食品をバランスよく摂取すれば、それらの食品は栄養となり薬となり人を健康にする。
そういうことで、ここでは、「○○○○をたべたら、癌に効く」というような非科学的なことを並べ立てるつもりはない。
ただ、かまぼこというものを考えた場合、あくまで、海に泳いでいる魚が主原料であり、魚のもつ栄養の多くを引き継いでいると言うこともできる。
しかしながら、かまぼこは、科学的に言うと、塩溶性タンパク抽出加工食品ということができる。 つまり、魚のタンパク質のうちほぼ塩に溶けるタンパク質だけを取り出して、それを成型加工して熱を加えて固まらせたものである。
まず、かまぼこの栄養成分として最初にあげられる機能ではなんといっても消化のよいタンパク質が豊富なことである。
また、かまぼこの原料処理工程では脂肪分はほとんど除去されるが、わずかに含まれる脂肪についても牛肉,豚肉のそれと異なり、たくさん食べても肥満や動脈硬化を引き起こしたりすることがない。
また、かまぼこはたくさん食べることで、血中コレステロールが低下し、動脈硬化が予防されるなど、体に素晴らしい働きをもたらすことも最近の研究で少しづつ分かってきたことである。
近年では、古今東西多くの人がダイエットに挑戦してるので、少しだけダイエットとかまぼこを関連づけて話をしていこう。
体重オーバーの人が減量することは成人病を防ぐ上でも必要で、ダイエットそのものは悪いことではない。 問題なのは無茶な痩せ方である。例えば、体重50キロの人が過剰なダイエットによってあっという間に40キロに減量したする。この場合、減った10キロをすべて脂肪と勘違いする人がいるが、実は減った重さの半分は脂肪であっても、あとの半分は骨や筋肉を減らしてしまっていることに多くの人が気づいていないのである。
その上、さらに悪いことには、そのあとリバウンドがきて、元の体重に逆戻りしたとき、増えた分の殆どは脂肪で、骨や筋肉は戻らないということである。
このようなダイエットを繰り返していれば、脂肪は減るどころか増え、また筋肉は衰え、骨も弱くなっていき、若くても骨粗しょう症になったりする弱い身体になっていくのである。(見た目はスマートになっても、どんどん不健康な体になっていく)

投稿日/2021年1月18日

日本海の魚の多様性

【日本海のさかなの話  最新の魚類学研究から】その①

日本海のさかなの多様性

今回より連載をすることになりました京都大学フィールド科学教育研究センター舞鶴水産実験所の甲斐と申します。よろしくお願いいたします。

私の専門は魚類の系統学と分類学。簡単に言いますと、この地球上には何種類くらいの魚がいるのか? そしてどうやってたくさんの種類の魚が進化したのか? ということの研究・教育を行っています(図1:調査航海に参加中の筆者)。この連載では、最新の研究を通じて分かってきたことをこぼれ話も交えてわかりやすく説明していきたいと考えています。

【図1】

 さて、私がこの舞鶴にある京都大学の水産実験所に赴任したのは2004年の春のことです。それまで、いろいろな場所で魚の研究のため、調査に参加したり、観察したりしてきました。例えば、高知県の足摺岬の近くや、和歌山県の潮岬、それから東シナ海など・・・。幸運なことに、かなりの種数の魚に出会う機会に恵まれていたと思います。しかし、日本海側では調査の機会がなく、あまり日本海の魚については知る機会がありませんでした。そこで、舞鶴に赴任してからさっそく、どんな魚が捕れているのかと舞鶴の漁連に見学に行きました。

私が今まで調査したことのある高知県や和歌山県南部は、黒潮の影響がとても強い地域です。これらの場所で魚を見ていると、「派手な魚が多い」と感じます。とにかくカラフルな魚が多く、銀色の魚に混じって、鮮やかな赤や青、黄色の魚が捕れています。これに比べると、初めて日本海の魚を見たときの印象は、残念ながらちょっと「地味な魚が多い」と感じました。あまり鮮やかな赤や黄色の魚は見られません。このため、一見種数は少なく見えます。実は多くの魚類学者もそう思っていたようで、日本海は「魚の種類が少ないから」などと言われて、あまり注目されてきませんでした。実際、太平洋側に比べると、日本海で魚の種類数(=多様性)を調べた研究というのはとても少ないのです。しかし、あまり調べられていないというのは、逆に言うといろいろな研究の「ネタ」が隠されているのかもしれません。

ある地域にどのような魚が分布するかを調べることを「魚類相(ぎょるいそう)を調べる」と言います。そこで、日本海の魚類相をきちんと調べるため、2004年以来、舞鶴を中心に魚市場にあがる魚を調査したり、いろいろな調査船にお願いして乗船させてもらい、とにかく日本海の魚を採集して調べてみることにしました。

さて、いろいろな方にご協力いただいたおかげもあり、標本採集は順調に進んでいます(現在も進行中ですので、珍しい魚を見かけられたら是非ご一報を・・・)。現在までの記録をまとめてみると、舞鶴を含む日本海の南西部には約800種、日本海全体で見ると約1000種もの魚が住んでいることが分かりました。800種や1000種と言ってもピンとこないかもしれません。日本に分布する魚は、淡水魚も併せて約4000種と言われています。つまり、日本に生息する約五分の一の魚が舞鶴周辺を含む日本海南西部で見ることができ、四分の一の魚が日本海に分布すると言うことになります。「日本海は魚の種類が少ない」と言われていたのですが、きちんと調べてみると、実は結構な種類の魚がいると言うことになります。

ちなみに日本に生息する4000種と言う数は、オーストラリアに分布する魚の種数とほぼ同じと言われています。ご存じの通りオートラリアの陸地は日本の何倍もありますが、海岸線の長さで見ると日本とほぼ同じです。そう考えると、日本に分布する魚の種数とオーストラリアに分布する魚の種数がほぼ同じというのは何となくわかりやすいと思います。あの広大なイメージがあるオーストラリアと同じくらいの種数が見られる日本は実に魚に恵まれた場所なのです。

さて、今年で日本海の魚類相調査を始めて丸6年がたったわけですが、このようにデータを整理してみると大小いろいろな発見がありました。一つの大きな発見は、「ニホンキンカジカ」という体長10cmほどの新種のカジカの仲間を発表したことです(図2:2009年に新種として発表されたニホンキンカジカ)。

【図2】

 「新種」というと、珍しくて普段なかなか目にすることができないのではないか、と思われがちです。しかし、必ずしもそうとは限りません。特にニホンキンカジカの場合、底曳網で取れるキアンコウやミズダコに混じって捕れていることが多く、決して「珍しい」魚ではありません。水深150m〜200mくらいのところでごく普通に見られます。実は、近縁種の「キンカジカ」とよく似ているために混同されていただけなのです。

従来、「キンカジカ」と言われていた魚は、島根県以北の日本海と東北太平洋に分布するとされてきました。しかし、東北太平洋の「キンカジカ」と日本海の「キンカジカ」を比べると、いくつか形態に違いがあることがわかりました。東北太平洋の「キンカジカ」は雄の背鰭が長く伸びるのですが、日本海の「キンカジカ」は雄の背鰭は長く伸びません。形態の違いだけではありません。遺伝子も調べると、東北太平洋と日本海の「キンカジカ」はそれぞれ明瞭に異なっていることが分かりました。つまり、両者は別種の関係にあると判断できます。さらに分類学的に調査を進めていくと、東北太平洋のものを本来のキンカジカと呼ぶべきで、日本海の「キンカジカ」には名前がない、つまり新種であることが分かったのです。そこで新しい和名としてニホンキンカジカを提唱しました。

ここで、少し日本海の特徴について説明しておきたいと思います。世界地図を開いて日本海を見ると、日本海は大陸と日本列島に囲まれていて、大きな湖のように見えます。日本海は、四つの狭く浅い海峡で太平洋とつながっているだけで、とても閉鎖的な海と言えます。これらの海峡は深くても一五〇m程度。つまり日本海の一五〇mより深いところにすむ魚は、極端に言ってしまえば太平洋から「孤立」していることになります。ニホンキンカジカもやや深い海に住む魚です。ひょっとすると、日本海の深い海に生息する魚には、太平洋から孤立して独自に進化してきたものが含まれている可能性があります。実際、日本海の深いところには、日本海にしか見られない「固有種」も多く見られることが知られています。日本海の固有種は「いつ、どこから来たか?」興味は尽きません。遺伝子に残された情報をうまく利用すれば、こういったことも明らかになる可能性が高いのです。

私たちには、ものすごく身近な日本海ですが、こうして見ると、ちょっと学術的に面白い海であることがわかってきました。日本海には、まだまだ名前の付いていない新種の魚もいますし、研究の「ネタ」が多く隠されていそうです(図3:まだ名前の付いていないゲンゲの仲間、日本海南西部から採集)。

【図3】

今後もいろいろな魚を採集していって、日本海の魚の「謎」を明らかにしていきたいところです。

これからも日本海の魚を中心に、旬の面白い話を最新の研究結果とともにお届けしていきたいと考えています。よろしくお願いいたします。

京都府漁協だより 平成22年10月4日発行 より転載

投稿日/2020年11月5日

かまぼこの日 かまぼこ百科②

かまぼこ博士のかまぼこ百科


「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこと博士」呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次、21回に分けて掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまいます。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのでご了承ください。

かまぼこの日 かまぼこ百科②

かまぼこが文献にはじめて登場したのが、西暦1115年であることにちなんで、業界では11月15日を“かまぼこの日”と決めていることを読者の皆様はご存知であろうか?

かまぼこの日のイベントとして、2年前から『舞鶴かまぼこ板に絵と文字大賞』というイベントを企画し、昨年末は第二回目のイベントを実施している。
テーマを決めて、かまぼこ板1枚に、絵と文字で自分の世界を表現していただくことにしている。 テーマは毎年、変えてきており、第1回のテーマは「愛」とし、第2回目は「ありがとう」とした。

ありがたいことに、当初より、舞鶴市を中心とした近隣市町村地域の幼時からお年寄りまで、たくさんの応募をいただいた。
応募要領については、ホームページや新聞報道などに、逐次詳しく掲載させていただいているが、これからも応募点数はどんどん増えていくだろう。

今年も、1月中旬から2月にかけて、約1ヶ月間にわたり応募していただいたすべての作品をJR西舞鶴駅にできた「舞鶴観光ステーション」にて展示させていただき、西舞鶴駅利用者の皆様方にご覧いただき、帰りにはその場でかまぼこをはじめとする舞鶴の土産品や記念品をお買い求めいただいた。

さて、舞鶴は地図でみると、一見、北側に海をたたえた海のゆたかな地形をしているが、実際に舞鶴に足を運んだ人からは、三方が山に囲まれている地形であるため、舞鶴市内にはいってもなかなか海が見えず、海というイメージがわかないと言われることが多い。
魚を扱う側で仕事している私としては、地元で獲れる魚は確かに新鮮で美味しいと思っているが、他所から来られたお客様をもてなす際には、多くの安価な店では特別美味しいと思うような魚を出す店が意外に少ないと人から言われることがある。
当然なのかもしれないが、お客も自分も納得するような魚料理を食べようとすると、そこそこ高級なお店にいかざるを得ないというのが舞鶴の現状ではないだろうか。
地元のマツバカニやトリガイなどの高級品に至っては、舞鶴の特産品といっても、なかなか一般の市民が口にできるものではない。 そのような中では、舞鶴のかまぼこは、若干、高価であるものも多いようだが、手が届かないほどでもなく、年中、地元の鮮魚や近海の魚を豊富に使用して製品作りをしているために、魚本来の味がし、地元流通を中心としているので不要な添加物も使われておらず、舞鶴市内ではほとんどの小売店(スーパーなど)の食料品売り場、お土産売り場に置いてあるので、買いやすい食品になっているのではないだろうかと贔屓目で見てしまう。
反面、人様からはよく、もう少し相手に差し上げるのなら、差し上げるようなスタイルや相手の心を打つしかけが商品にもっと必要なのではないかと叱咤されることも多く、まだまだ研究の余地があり、業界人としても、品質にあぐらをかいている場合ではないという警鐘と受け止めている。

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