かまぼこ博士のかまぼこ百科
「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこと博士」呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次、21回に分けて掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまいます。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのでご了承ください。
かまぼこは添加物多いというウソ(1)
かまぼこやちくわ、てんぷらなどの魚肉練製品(ぎょにくねりせいひん)には添加物や保存料が多いという消費者の不安感が強いようである。わたしはこの業界に足を踏み入れてからも、常に練製品には添加物が多く使われているのではないかとの消費者の不安の声を数多く聞かされてきた。
しかし、私には、魚肉練製品が他の加工食品と比較して添加物が多いという話は、全く、理解できないことであり、多くの加工品の中では、むしろ使っている添加物の種類が圧倒的に少ないほうの部類にはいると思っている。(私は大学を出てから、大手食品会社の研究所に入り、いろんな加工食品の研究開発業務に携わってきたのでよくわかる。)
中でも、舞鶴のかまぼこは、まず、近海の鮮魚を毎日、頭切り、内臓除去を実施して魚の肉(身)だけを取り、水でさらして適度な水分まで絞った生のすりみを原料として多く使用しているので、冷凍変性防止剤などの添加物は不必要である。 さらに、舞鶴かまぼこは、生の肉糊(にくのり)をかまぼこ板の上に成型して載せると、すぐにセロファン系のフィルムで表面を完全に覆って(焼き板は例外である)から蒸しあげているため、以後の工程で、落下細菌などの二次汚染を受けにくいことから、かなり日持ちがするようになっている。
そのため、昔のように保存料を入れなくても、舞鶴かまぼこは賞味期限10日間を保証している。(賞味期限というのは、おいしさを保証する期間の意味であって、日持ちする期間を示しているわけではない。) もちろん、こうした理由から10数年以上も前から舞鶴かまぼこには保存料はいっさい添加されていない。
組合の研究室で保存試験をしているが、条件さえよければ、実際には10℃以下の冷蔵庫で、2週間以上、生で放置しておいて、そのまま生で食べても大丈夫なときが多い。
販売店のほうから、さらに日持ちのする真空商品やレトルトなどへの要望も数多くあったが、舞鶴かまぼこは、やはり鮮度のよい日配品、生鮮品として消費していただくのが一番であり、おいしさにこだわれば、これ以上の日持ちは求めないという信念のもとに舞鶴かまぼこを生産してきている。
したがって、舞鶴では、一ヶ月以上も日持ちのするような長期保存用のかまぼこを製造するというような考え方を持っている事業者は今のところ皆無である。
今よりも日持ちを長く保証するためには、衛生管理のほかに、どうしても保存料に頼らざるを得なかったり、過度の加熱工程を経て、魚肉タンパクそのものを傷めて味を落さなくてはならなくなるからである。
ソーセージのように高温高圧殺菌をして、タンパク質を傷めても、強烈なスパイスなどを配合しておくことで味をマスキングしたりすることができるが、味覚的にも淡白なかまぼこではそうして誤魔化すことができないのである。