かまぼこ博士のかまぼこ百科
「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこと博士」呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまうでしょう。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのがご了承ください。
おでんとかまぼこの話
かまぼこは高タンパク食品であっても、それ以外の油脂分や水溶性蛋白は製造段階で減量する。加工食品はいろんな“健康イメージ”を打ち出して、販売しているが、医食同源ということばの通り、食品は人間に栄養となり、時に薬にもなったりすることがある。
しかしながら、ある特定の食品のある特定の栄養素だけに注目して、偏って食べることは栄養学的にみても好ましいことではなく、おすすめはできない。
通常、ある食品を食べる時はかならず、他の食品からも必要な栄養素を補うことをおすすめしたいが、「おでん」の場合は意識してそうする必要はない。
鍋の中は、あらゆる栄養成分が揃った状態にあるからであり、しかも、日本人のほとんどが好きな料理の一つが「おでん」ではないだろうか?これにはかまぼこ類(天ぷら、ちくわ、すりみ、つみれ、ハンペンなど)がたくさん使われてる。
ごぼう巻きだと食物繊維が、野菜天のにんじんにはビタミンAがいっぱいである。
ビタミンAは油といっしょにとらないと体内に吸収されないのであるが、野菜天は油で揚げたものなので、非常によく吸収される。
また、つみれ、調味すりみ(いわし、さば、など)には血液、脳の働きをよくするEPAやDHAといった高度不飽和脂肪酸が豊富に含まれている。
そのうえ、おでんにはかまぼこ以外にも大根、こんにゃく、卵、厚揚げ、昆布巻きなどが使われ、それらの栄養素も加味されるので、まさにおでんは栄養の宝庫といっていいだろう。
食品というのは、元来、こういう風に組み合わせて食べると身体によい場合が多く、その種類が増えることで不足する栄養素が自然に補われていることが多いのである。
寒い日は家族で鍋を囲んで食べるのが一番であるし、その食卓の光景が一般的になったのは、調べてみると、日本の歴史の中ではそう古いことではないようである。
そもそも昔は、日本も身分制度が厳格であったために、夫と妻、親と子あるいは身分の高いものと低いものが一緒になって食事をすることはなかったようである。
日本の歴史上、最も古く鍋料理が書物に登場したのは1643年(寛永20年)の「料理物語」であるが、その書物によれば、当時は野菜を味噌の上で煮た鍋を炊事場から食卓へ運んで出していたようである。
日本の伝統食品である「かまぼこ」が初めて書物に出現したのが、1115年であるので、鍋料理が登場したのがそれから500年あまり後のことであると考えると鍋の歴史は比較的新しいということになる。
さて、おでんも、所により入っているものが大きく変わる。関東ではおでんの中に、ちくわぶ(ちくわでなくてちくわのような形をした麩)や練り物のすじ(牛すじではない)や白いハンペン、くじらのベーコンまで入っているが普通だが、舞鶴から東京に就職した私の同級生に聞くと、最初は驚いたし、なかなかなじめないでいたと言う。 それぞれの地域でたべるおでんの味にはその土地の文化と歴史が隠されている。 最近、おでんも、地域おこしの目玉になっており、静岡おでん、姫路おでん…..などという独特の地域のブランドおでんが誕生してきている。
ちなみに、10年あまり前に、ミツカンが実施した「家庭における鍋料理のトレンド」調査によると、なべの中で実施率がもっとも高かったのは、やはりおでん(85%)であったそうである。