かまぼこ博士のかまぼこ百科
「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこと博士」呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまうでしょう。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのがご了承ください。
おせちとかまぼこ
おせち料理は、御節料理と書いて、昔は節句に作られる料理のことを指していた。
最近は、特に正月にむけて年末までに用意されるお祝いの料理である正月料理のことをおせち料理というようになった。 現在のように正月からスーパーや百貨店が開いている時代には、味を濃くして保存をよくしたりする本来のおせち料理の必要もなくなり、なんとなく正月のお膳の彩りのような存在になりつつあるのではないだろうか?
おせちは元々、正式には五段の重箱に詰められた料理だった。 一の重には祝肴として田づくり(orたたきごぼう)、数の子、黒豆の三種が入っていた。 かまぼこは二の重に入っていた。二の重には酢の物や口取りといわれる紅白かまぼこ、伊達巻(orだし巻き)、栗きんとん、昆布巻き、お多福豆などが入っていた。三の重には焼き物が、四の重には煮物が、五の重には何もいれない空の重とすることが決められていたが、四の重では縁起がわるいのでそのようにしたといわれている。
それぞれに、新年を迎えての縁起のよいものが料理として使われてきたが、かまぼこは、かならず紅白で入れて、めでたい彩りを演出する役目があるようであるが、元々は神饌(神棚に供するお供え物)の赤米、白米を表すものであったという。
いずれにしても、日本人のめでたさや神聖な色は、ずっと紅白であった。 日本人のDNAにはきっと、この紅白が縁起のよいめでたい色として焼き付けられているような気がする。
おせちの中には、ほかに紅白なますといって、お祝いの水引をかたどった料理もある。
おせちの中に使われている食材は、めでたさを表現するもの、長寿を祈願するもの、子宝を祈願するもの、出世を祈願するもの、来る年の先見性を祈願するもの、幸福を祈願するものなどにわかれている。
その中でも、紅白かまぼこは、めでたさと五穀豊穣を願って加えられたものと考えられる。 上流階級の七五三の祝いの膳にも、昔から紅白かまぼこが使われてきたと言い伝えられているので、とにかく、めでたい席には常連の食品であったことは間違いがない。
今では、かまぼこも、大量生産が可能になり、誰もが食することのできる比較的ポピュラーな加工食品になっているが、昔は比較的裕福で、位の高い人しか味わえないものであったようである。
しかしながら、江戸時代後期の貞丈雑記には「蒲の字、カマとすみて読むことなり。田舎びとはガマとにごりていふなり。」と書かれており、この頃になると、年に何度かは普通の市民でもなんとか、かまぼこを食べることができるようになったのではないかと推察している。
最近、かまぼこも、「舞鶴かまぼこ」のように鮮魚から加工した生すりみを原料とした本格的なかまぼこが少なくなり、他の地区で、おせちに使われている多くのかまぼこが、どちらかというと、味よりも彩(いろどり)を大切にする傾向にあるのが残念である。
おせちスタイルでかまぼをたべていただくのもよいことだが、お雑煮の横に新鮮な地元のかまぼこを11ミリの厚さに切って、皿に盛り、正月を祝って食べていただくほうが、舞鶴らしいかまぼこの食べ方といえるのかもしれない。