かまぼこ博士のかまぼこ百科
「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこ博士」と呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまうでしょう。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのがご了承ください。
海外かまぼこ事情 韓国編⑦
地下2階から1階へ行き、同じように先ほどの入室作業を繰り返して中に入ると、そこは揚げかまぼこの製造ラインが整然とならんでいた。
揚げかまぼこは、5ラインくらいの揚げライン(ほとんど二槽式であったが、通常の平天スタイルのものは、一槽式で揚げているようだった。)主原料は韓国語で記載されたすりみ(これが質問状の中でどんな原料を意味するのか不明だったのだが、現地でやっと太刀魚のすりみを意味していることが判明)であった。
工場スタッフに聞くと、太刀魚すりみはベトナムからの輸入品であるとのことだった。これは日本では増量剤程度にしか使われていないすりみである。一度、私の検査室でも調べてみたが、数値として計測できないような格外品であったのを覚えている。澱粉配合率を聞いてみたが、平然として「20%です」と言っていた。でん粉配合率の高さに驚いてしまった。(舞鶴かまぼこの10倍以上のでんぷんが配合されている)
平天といっても、韓国のそれは、成型機から出てくる厚みが数ミリのシート状のものであり、油槽から撮ってくる姿は、日本で言うところの“きつねうどんにいれるお揚げさん”のように見えるものであった。
あとで試食もしたが、非常に食感が硬い。とても日本人の生食ニーズにはこたえられない品質であった。まだ、揚げ物はかたくても食べれるが、板かまぼこはまさにゴムを齧っているようなもので、これは日本人の私としては食えたものではなかった。
今回、品質向上のためにもアドバイス、指導をしてくださいということで呼ばれたわけであるが、韓国市場では、やわらかくすると不良品と見られまったく売れないという話を聞くと「じゃあ、あなたがたの目指す高品質とはどんな商品のことをいうのか」と何度も聞いて意見がぶつかった。これは昼からのディスカッションでも、時間をとった問題であり、いろんな意味で日本と韓国の食文化の違いを認識せざるを得なかった。
問題点は、成型時の重量バラつきをどうしたら解消できるかとか、この商品にはどんな魚種のすりみ、真空商品の殺菌条件、冷却条件、それに商品の冷却後の水分除去などの問題についても詳細にわたっての指導を行った。現地から、それぞれの工程の機械等をリスト化してモバイルパソコンに入れてきたので、それも役立った。
だが、今日一日だけの現地指導であり、私の言ったことが検証されるのは後日になる。もし、私が指導して帰ったことを実際にやってみて、問題が解消されなければ、もう私の指導者としての意味はなくなるだろう。
結局、技術者としては、本当なら現場にはりついて、もう少しの間、試行錯誤を繰り返してみたいという欲求が高まったのは事実であった。(冷静に考えれば、まじめにそこまで労力を提供する必要もないのだが、やはり元々技術者であった血が騒ぐのであった。)