かまぼこ博士のかまぼこ百科
「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこ博士」と呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまうでしょう。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのがご了承ください。
海外かまぼこ事情 韓国編⑥
カニスティックの加熱ラインはドラムからスチームが出る機械がすでに導入してあり、数ヶ月前に日本の大手、姫路のヤマサを視察したときに見たものと構造は同じであった。
ただ、日本のドラムスティーマーの上のシートと比較してもそれは、若干、褐色かかり、シートには無数の穴が開いていた。なぜ、こんなに穴だらけなのか?と聞いたが、逆にどうすれば、気泡を防止できるのか?と逆に問われ「バキュームカッターの真空圧が低いのでは?」と答えると「以前に、圧を変えてやってみたが同じことだった」と言うので、「じゃあ、練り肉に問題があるのかもしれない」と答えると「どんな配合にすればいいか」と聞いてくる。「日本では、カニアシの良品を生産しているメーカーはスケソウの上級すりみを使用している。イトヨリと混ぜているメーカーもあるが、シート適正はイトヨリはあまりよくないのではないかと私は思う。スケソウの配合を増やすことで解決できると思う」などとアドバイスと質問の応酬が始まった。彼らも興味をもった部分については、私の意見を聞いて熱心にメモをとったり、大きくうなずいたりしていた。結局、アドバイスなど、それほどできないだろうと思っていたカニ足ラインでさえ、最初からかなり時間をくうことになり、精神的には少し楽になっていった。また、工場スタッフからの質問で「日本のかまぼこメーカーと比較して機械などの能力はどうか?」とよく聞かれたので、「概ね、機械等は日本のかまぼこメーカーの使用しているものと同等かそれ以上だ」と答えておいた。
彼らのすばらしいところは、真面目に工場衛生を考えて取り組んでいることであった。ハンドブラシで爪の中を洗浄し、手を洗い、殺菌液に浸したタオルを手で絞り、紫外線殺菌のついたエアーで手を乾かし、クリーンローラーで体の異物を取り除いてから殺菌液のはいった水溜りに足を入れ、エアーシャワー室にはいってから、さらに殺菌槽に足を入れて製造場に入る。手で触る箇所のドアノブなどは殺菌液を含ませたタオルで巻いてあるなどの、かつて上野製薬あたりが日本のかまぼこメーカーに衛生指導をしていたころのマニュアルがそのまま守られていた。さらに逆走できないように、中側のドアノブは切り落とされていた。これをみても、単にあつらえたものを買ったのではなく、自分たちでそれなりに工夫をして真面目に取り組んでいる様子が伺えた。
エアーシャワーなどの装置も、買ってきたものだけではなく、見栄えはよくないが、日本で見てきたものを自分たちでオリジナルで作っていた箇所もあり、ハードは金で買ってくればいいというような思想だと思っていた自分が、少し勘違いしていると反省した次第である。トイレにはいっても、私は手洗いの水道の蛇口をつかんで思わずひねろうとしたが、一緒にはいっていた中塚氏に「衛生指導に来ていて、そんなことじゃ駄目ですね」とひやかされ、足ふみで水が出てくる仕組みであることに気がつき、少し恥ずかしい思いをした。もちろん、日本の企業であれば、そういう装置ならもともと蛇口などひねらないようにできている筈であり、これも、通常の水道を改造して使っていた彼らのオリジナリティを理解してないことから起こったハプニングなのであった。