かまぼこ博士のかまぼこ百科
「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこ博士」と呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまうでしょう。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのがご了承ください。
かまぼこはなぜ白いのか
ちょっと昔、かまぼこは、漂白剤を使って、表面を白くしているのではないかという疑惑がわき起こったことがあった。実際には、ほとんどの蒲鉾業者はまったく使用していなかったのであるが、当時、関東地区で製造していた浮きハンペンなどの「ゆでもの」には、一部殺菌の為に使われていたものがあったようである。(以後は使用禁止となり今では使われていない。)
かまぼこが白いのは、原料に白身の魚を使い、細かくした魚肉を水でよく洗う水晒(みずさらし)をするためである。
イワシ、サバなどの青背の魚や、マグロなど赤身の魚肉が赤い色をしているのは、ミオグロビンなどの筋肉色素を多量に含んでいるからであり、ミオグロビンや血液の色素ヘモグロビンは鉄を含んでいるたんぱく質で、加熱すると灰色にかわる。 魚の種類によって、ミオグロビン含量が違い、当然ながら赤身の魚に多く、白身の魚は少ない。普通の水晒しでは、こららの筋肉色素を完全に洗い出すことはできない。
このため、色素含量の多いイワシやサバなど、赤身の魚からは灰色のつみれや黒ハンペンのようにくすんだ色の商品しかできない。
したがって、板付きのかまぼこに、こうした赤身の魚を使うことはあまりない。
舞鶴で、いわしが大量に獲れた時期には、イワシの活用ということで、「イワシ蒲鉾」なるものも開発したことがあったが、健康ブームが去ると、やはり色がくすんだかまぼこは商品価値が低いためか、売れなくなった。
ただ、同じ白身の魚であっても、色素含量に多少の差がある。舞鶴かまぼこの命 とも言われているシログチという魚は、いくらよく晒しても真っ白にはならないが、スケソウダラやエソといった魚の身は晒すと真っ白になる。
水晒しには功罪があり、肉中の水溶性たんぱく質やエキス成分も洗い流されてしまうので、魚肉の成分の有効利用という面から考えるとマイナス面であるが、水晒しをすることで生臭さがとれたり、かまぼこの足 (=弾力)が強くなり、色が白くなるというプラス面がある。ただし、板ものはそうした白さが求められるのに対して、同じ練製品の天ぷら、ちくわではそのハードルが低く、多少色がくすんでいても商品価値が下がらないので、赤身の魚も一部活用することができる。
漁連など水揚げ後に、生鮮魚としての価値の低い魚(消費者になじみのすくない魚という意味であり、魚そのものの持つ価値やの鮮度や品質をいうものではない)も、水さらしをすることでかまぼこの原料として有効に利用できるようになるので、舞鶴のように、漁獲された魚を広い範囲で有効利用することができるすりみ工場を自らもっている地域は、これからの近海魚の有効利用という面からは、メリットが大きいのではないかと思う。
よく消費者から、かまぼこはどんな魚からでも作ることができるのですかという質問をお受けするが、基本的には、こうした理由から、品質や色合いの良し悪しは別として、どんな魚からでもかまぼこはできますとお答えするようにしている。