かまぼこ博士のかまぼこ百科
「かまぼこ博士のかまぼこ百科」は、舞鶴かまぼこ協同組合の辻義雄専務理事(舞鶴市民から「かまぼこと博士」呼ばれています。)が執筆され、2011年から約4年間にわたり、舞鶴市民新聞に連載されたものです。かまぼこ、とりわけ舞鶴かまぼこへの愛に満ちた「かまぼこ博士のかまぼこ百科①~㊺」を順次掲載します。読めばあなたも「かまぼこ博士」。そして、舞鶴かまぼこがとても食べたくなってしまうでしょう。
なお、当コラムに掲載するにあたっては原文のままとし、日時や役職、社名等も当時のままとしています。また、今では存在しないメーカー、商品もありますのがご了承ください。
舞鶴かまぼこの原料魚(その2)
エソはハダカイワシ目エソ科の魚で、世界中の暖海域に分布している。 巨大なアゴと鋭い歯を持ち、非常に獰猛で、写真のように漁獲された網の中でも捕食をして口に他の魚を丸のみしている姿をよくみかける。
舞鶴ではエソの種類はあまり気にせず使っていることが多いが、ワニエソ、トカゲエソ、マエソの3種類が主に漁獲されているらしい。
エソは肉色が非常に白い。グロテスクな魚であるが、藤六かまぼこの先代の店主がよくすりみ工場から、エソのアラを持ち帰って、よろこんで家で食されていたのを思い出す。
あまりにその姿がグロテスクで、顔だけを見ているとゴジラか、エイリアンのように見えたりするので、本当に美味しいのか半信半疑であったが、分析してみるとエソは旨みの非常に強い魚であるということがわかった。 やはり先代の舌は確かだったことが証明されたわけである。最近、エソは舞鶴で比較的よく水揚げされるようになっている。
鮮度のよいエソは、グチと同様に40℃~50℃で高温坐りをかけると弾力の強いかまぼこができる。 ただ、エソでつくる弾力にはグチのようなしなやかさが足りない。
ただ、焼き抜き(蒸さずに最後まで遠火で焼いてつくる)かまぼこについては、独特のよい食感がでるので、山口県の仙崎地区や紀州田辺、豊橋の焼きちくわなどの高級かまぼこを中心とする生産者は、舞鶴におけるグチと同じようにエソを重宝しているようである。
また、グチとの違いとして大きい特徴は、鮮度低下がかまぼこのアシ(=弾力)形成を致命的にするということである。 グチのように遠い漁場から運んできて、陸上ですりみにするということができず、漁場が遠いと、かまぼこの原料としてはあきらめないといけないくらいである。
また、冷凍にも弱く、エソは冷凍にすると、急速に冷凍変性がおこってかまぼこ原料にならなくなるのである。
いずれにしても、この魚をかまぼこにするためには、時間との闘いである。
舞鶴では、弾力面でのエソへの期待はなく、むしろ、味付けに利用しているため、鮮度が特によいものは板かまぼこにも使用するが、天ぷらやちくわの味付けの原料として活用していることのほうが多い。
エソが冷蔵中や氷蔵中に、かまぼこにならなくなる理由として、体内でトリメチルアミンオキサイドを分解してホルマリンを作る性質があり、これがたんぱく質を急速に変性させることが原因であることがわかっている。
余談であるが、エソはその身が美味しいのはもちろんだが、その皮も脂肪が多くて旨みに富んでいるため、四国の八幡浜や紀州田辺では、ごぼうに皮を巻きつけてたれをつけてあぶり焼きにして“八幡巻き”という名産品として売られている。